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最後のこもかぶり(菰冠)

更新日:8 分前

シンスケの樽酒は、杉材の樽にお酒を詰め、ワラで編んだ【菰(コモ)】を被せた昔ながらのもの。

「菰樽(こもたる)」「本樽(ほんたる)」とも表すこのスタイルは、一方で【樽に浸かっている時間で酒の味が変わる=3日目より10日目のほうが杉の風味が強くなる=味が安定しない】として、多くの飲食店や宴会場では「表には飾り樽(内側は発泡スチロール)、厨房で一升瓶の樽酒から注ぐ」ないし「樽サーバー(内側が金属やホーロー製のタンクになっている)」を採用。

管理の難しさを理由に、いまではとんとお目にかかる機会が少なくなってきています。


そんな現在。

ついに【昨今の需要減のため、ワラを編んで作るコモの通常生産を終了とさせていただきます。以降は特注生産となるため、酒と樽とは別に、コモ1枚につき18,000円のコストがかかります】とのお知らせが。


材料費や酒税など酒そのものが理由であれば値上げも止むを得ません。

しかし、外装コストを売価に反映するのは違うと思い、

「杉樽のまま出荷して、保存しておいた菰をお店でかぶせる」

「菰をリサイクルして樽屋さんでかぶせ直していただく」

など蔵元と現状維持について協議した結果、

【本樽に飾り樽用の化繊コモをかぶせる】やり方にて味はそのままに値段を据え置くこととなりました。


江戸時代、菰や筵(むしろ)は安価で便利な梱包材としてあらゆる需要に応えていましたが、現代では化繊(ビニール)素材がその後継として使われています。


その意味で、今回のワラのコモ→化繊のコモというのは必然という見方もできましょう。

ただ、違う角度で光を当てるなら、

【丸い樽を輸送する際、馬に背中に鞍掛する、船倉に積んで荷揚げ荷下ろしする利便性からコモがけになった】

という背景があります。

コンテナやトラックでの運搬に置き換わった現代では、いまの利便性にふさわしい梱包の形もあるように思います。だから、シンスケでは今後、酒屋、蔵元、あるいは帆布屋などと相談して、新しい形の樽酒ができないか相談・検討してゆく所存です。


江戸から令和まで続いた樽酒スタイルのピリオドについて、ご報告させていただきました。

なお、樽酒の販売そのものは5月下旬まで継続し、再開は11月15日ごろとなります


左側の「緑がかった紐の樽」が化繊コモ、右の「黄色っぽい紐の樽」が最後の藁コモ
左側の「緑がかった紐の樽」が化繊コモ、右の「黄色っぽい紐の樽」が最後の藁コモ

化繊コモはつるんとして表面が整っている。横紐はまんまビニール紐
化繊コモはつるんとして表面が整っている。横紐はまんまビニール紐

藁コモは乾燥したボタニカルゆえケバ立ちが強い
藁コモは乾燥したボタニカルゆえケバ立ちが強い

●おまけ

お店に置いてある樽が「中に酒が入った本樽」か「飾り樽」かの見分け方


本樽の場合、酒を吸い口から出す際、ノッキングして酒が出ないことがないように、必ず上部に空気穴があり、そこにワリバシが突っ込んであるのが常です。

※万が一の酒漏れ対策として、空気穴をふさいでおくと酒の駄々洩れが防げる


また、注文のたびに酒を抜くため、吸い口まわりが必ず湿っています。


つまり、空気穴がなく、吸い口が未使用っぽい場合は「飾り樽」だというわけです






湯島天神下 シンスケ
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