meetsしりあがり寿 画伯
コップの一般販売を決意したものの、『手吹きグラスの技術保存』という身勝手な理由なので、お求めされる方にとって何か楽しい試みをしたいと考えました。
その時まっさきに頭に浮かんだのは、末広町のアートスペースChiyoda3331で拝見した画伯の「希望(どんな場所でも花を咲かせることができるという再生の画)」という作品でした。
※右サイトのZINE「板絵」に収録
その絶妙な表情と目線に、我々が一日の終わりに晩酌する時の気持ちを見出し、本件について思い切ってご相談。
幸いにもこの試みを面白がっていただき、実現となった次第です。
木炭、万年筆、ペンなどさまざまなタッチで描いていただきましたが、最終的に禅画・水墨画ふうの筆描きにてお願いしました。
これはコースターがコップの結露(水滴)を吸った時、ぼんやりと壺中天のような酔った風情になることを意図しています。
また、個人的にしりあがり寿画伯のことを《現代の仙厓》と思っていることもその理由です。
当初は一絵柄だけの予定でしたが、ビールに寄り添うアイテムとして『四角いコースター』を選択した時、
「トレーディングカードみたいだな。ていうか、4コマ漫画にしたら面白そう!」
と閃き、集めて遊ぶという面白がり方ができるよう起承転結の4種+シークレットの全5種にイラストを増やしていただきました。
右の画像は一例ですが、
「お、ビールやんけ。飲んで飲んで飲んで飲んで寝ちゃった」
というストーリーが見えてきませんか?
こんなふうにも遊べるわけです。
なお、ご時世を悩ます『転売』への対策として、コースターは1ロット2000枚印刷しています。
エイジングという楽しみ方
骨董やデニムの世界では、エイジング(経年変化)を楽しむという価値観があります。
使い込むことで現れる風情は唯一無二。
だから、日本人はこの行為を「育てる」と呼び、むかしから面白がってきました。
コースターは衛生用品のひとつですが、自分専用に限ればエイジングアートとしても楽しめるのではないか。
そんな発想から、清潔感ある未使用の美しさと、馴染み感のある使い込まれた品のビンテージさの、どちらも成り立つように画伯と絵を詰めていきました。
しりあがり寿画伯の最近の作風は「劣化(ワビサビはじめ日本に根付いた無常観)」。
この境地に寄り添うべく、絵のセリフは「!」や「ハート」など記号で表し、時代が移り変わっても言葉が違う異邦人が見ても意味がそのまま伝わるようにしています。