だれかの「ふだん」がもどるころ

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2011年3月11日。
未曽有の出来事に震撼し、当日このまま店を開けるべきか躊躇。
しかし、父は迷わず行燈に明かりを灯し、縄のれんを掛けた。


「こんな時こそふだん通りにするんだ。これほどの揺れとあんな映像観たら誰だって冷静じゃいられない。電話も交通も通じないうえ、どこもかしこもシャッターが降りて電気が消えていたら、心がおかしくなってしまう。俺たちが変わらず店を開けることが、きっと誰かの大丈夫につながる」

パン屋はパンを焼き、床屋は髪を切り、銭湯は湯を沸かし、酒場は酒を温める。
我々の「ふだん」の生活は、誰かの「ふだんの仕事」の積み重ねによって出来ていることを、そして自分がそんな仕事をしていることを、あの日はじめて意識しました。


2021年10月1日。
「非常事態」の終わりを告げる酒場の再開。
もうすぐ83歳になる父に無理言って、口開けの縄のれんを掛けてもらいました。
淡々とした彼の背中をもって、リオープンのご挨拶に代えさせていただきます。​

シンスケ当代亭主